Fw : 漆黒の王子
初野 晴 『漆黒の王子』
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ある地方都市のマンションで、
男女の死体が発見された。
遺体は暴力団藍原組組員とその情婦。
だが、藍原組では以前から組員が連続不審死を遂げていた。
しかも、「ガネーシャ」と名乗る人物から、
「睡眠を差し出せ」という強迫メールが……。
一方、街の下に眠る暗渠には、
《王子》他6名のホームレスが、
社会と隔絶して暮らしていた。
奇妙な連続殺人事件は彼らの仕業なのか?
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27年前、クラス中から「死んでくれ」と、
頼まれて死に場所を探すぼくは、
車いすの少年・直之と出会う。
この2人の出逢いが後の奇妙な連続殺人事件を、
引き起こすきっかけになる。
数えきれない程に無数のインコが暮らす”上側”の世界では、
暴力団藍原組の組員の不審死が続き、
組長代行の紺野と、その相棒の高遠の元には、
”ガネーシャ”と名乗る人物から脅迫状が届き、
光の差さないひらすらに闇だけの”下側”の世界では、
王子、時計師、画家、音楽家など、
6名のホームレスがいつからかひっそりと暮らしていた。
多くの謎を抱えたまま、
多くの謎が解かれることないまま、
多くの犠牲の上に、
物語は紡がれていく。
決して壊れも千切れもしない、ひとつの絆。
決して揺るぎもぶれもしない、ひとつの意志。
このふたつがぶつかる時、
物語は思いもよらない展開を見せ、
悲し過ぎる、切なすぎる、
終焉へと加速していく。
良し悪しは別として、
人と人との絆と、意志というものが、
いかに強いものなのかを、
示してくれる1冊。
こんな風に強い絆と深い信頼で、
繋がれる友達がいたら、
きっと幸せなのかもしれない。
こんな風に決して揺るがない強い意志と、
実行に移せるだけの信念があったなら、
人から不幸せそうに見えても幸せだろう。
でも、読んでいると悲しくなります。
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