半落ち
横山 秀夫 『半落ち』
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「妻を殺しました。」
現職警察官・梶総一郎が、
アルツハイマーを患う妻を殺し自首してきた。
動機も経過も素直に明かす梶だが、
殺害から自主までの2日間の行動だけは、
頑として語ろうとしない。
梶が完全に”落ち”ないのはなぜなのか、
その旨に秘めている想いとは―。
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W県警本部捜査第一課強行犯指導官・志木の元に、
ある日の早朝、1本の電話が入った。
現職警察官・梶が妻を殺したと自首してきた、と。
取り調べを任された志木は梶と向き合う。
素直に殺害に至る動機から経過までは話す梶だが、
自首までの2日間のこととなると、
嘘をつき、言葉を濁し、頑として語ろうとしない。
心から愛し、大切にしている妻に、
「どうか殺してください」と懇願され、
現職警察官でありながら、
妻の涙ながらの願いを聞き入れた。
ただ優しくて、生真面目過ぎたが故に。
悲しみの連鎖。
苦しみの渦。
そして一縷の希望。
心から大切にしているものを失い、
心から愛し、大切なものを手にかけ、
生きることにさえ挫けそうであるのにも関わらず、
それでも男には守りたいものがある。
本当に守りたいもののためには、
人はどこまでも頑なに、
そして、どこまでも強くなれる。
悲し過ぎる想いだけではなく、
どうにも出来ない苛立ちだけではなく、
ただ守りたいという気持ちが生む、
強さと希望を見せてくれる1冊。
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