翼
村山 由佳 『翼』(集英社文庫)
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父の自殺、学校での苛め、母には徹底的に拒まれて……。
N.Y.大学の学生、篠崎真冬は心に深い傷を抱えて生きてきた。
恋人、ラリーの幼い息子ティムも、
実の母親から虐待を受けて育った子どもだった。
自分の居場所を求めて模索し幸せを掴みかけたその時、
真冬にさらなる過酷な運命が遅いかかる。
舞台は広大なアリゾナの地へ。
傷ついた魂は再び羽ばたくことができるのか。
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自分が生きていることで、
自分が関わることで、
大切なものの、大切なその輝きが、
どんどんと失われていく。
それは、思い込みなのか、
それとも、真実なのか。
その苦しみと痛みは、
計り知ることなど出来ず、
彼女の心を蝕み続ける。
けれど。
どんなどん底の暗闇にも必ず光は射し、
悪意なき暖かな手が差し伸べられる。
小さな出逢いが輝きを取り戻させ、
ささやかな優しさが温もりを取り戻させる。
決して止まない雨はないように、
決して明けない夜はないように、
決して人は、誰しも独りではない。
中途半端な時の流れは、
痛みでしかないとしても。
決して消すことのできない、
消えない傷はあるとしても。
癒しの訪れない傷は、
決して存在しないと、
そう思わせてくれる1冊。
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