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村山 由佳 『翼』(集英社文庫)


++++++


父の自殺、学校での苛め、母には徹底的に拒まれて……。
N.Y.大学の学生、篠崎真冬は心に深い傷を抱えて生きてきた。
恋人、ラリーの幼い息子ティムも、
実の母親から虐待を受けて育った子どもだった。
自分の居場所を求めて模索し幸せを掴みかけたその時、
真冬にさらなる過酷な運命が遅いかかる。
舞台は広大なアリゾナの地へ。
傷ついた魂は再び羽ばたくことができるのか。


++++++


自分が生きていることで、
自分が関わることで、
大切なものの、大切なその輝きが、
どんどんと失われていく。


それは、思い込みなのか、
それとも、真実なのか。


その苦しみと痛みは、
計り知ることなど出来ず、
彼女の心を蝕み続ける。


けれど。


どんなどん底の暗闇にも必ず光は射し、
悪意なき暖かな手が差し伸べられる。


小さな出逢いが輝きを取り戻させ、
ささやかな優しさが温もりを取り戻させる。


決して止まない雨はないように、
決して明けない夜はないように、
決して人は、誰しも独りではない。


中途半端な時の流れは、
痛みでしかないとしても。


決して消すことのできない、
消えない傷はあるとしても。


癒しの訪れない傷は、
決して存在しないと、
そう思わせてくれる1冊。




 

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真っ赤な林檎と自由のカケラ。



いつも、アタシの耳に音という名の、
自由と空想のカケラを届けてくれるもの。




音楽に支えられた夜があった。
歌に励まされた夜があった。
音にただイラついた夜があった。


それでもいつも傍らにあるのはミュージックプレイヤー。


もう二度と触れることの出来ない、
愛しい愛しい人を想って、
泣きながら歌を口ずさむ時も。


優しくてただ穏やかな気持ちで、
自転車をこぎ、
青空を仰ぎ見る時も。


いつも一緒のリンゴ。


この素晴らしいリンゴを生み出した彼が、
世界中に激震と悲しみを振りまいて、
ひとり静かに、永遠の眠りについた。


遠い日本の、小さな島国から、
小さな、小さな、悲しみの粒を、
ひとつぶ、彼に送ります。


どうか安らかな眠りを。




失はれる物語



乙 一 『失はれる物語』(角川書店)


++++++


目覚めると、私は暗闇の中にいた。
交通事故により全身不随のうえ音も視覚も、
五感の全てを奪われていたのだ。
残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。
ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、
日日の想いを演奏で伝えることを思いつく。
それは永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが…(表題作)


++++++


「Calling You」、「失はれる物語」、「傷」、
「手を握る泥棒の物語」、「しあわせは子猫のかたち」、
「僕の賢いパンツくん」、「マリアの指」、
あとがきにかえての書き下ろし「ウソカノ」、
の、7編というか8編の短編集。


それぞれに乙一らしさが滲み出ているのだけれど、
個人的には、「Calling You」、「傷」、
そして表題作の「失はれる物語」が好きかな。


誰にでもあるその瞬間の切実な、
切実過ぎて痛いほどの願いや望み、
上手に隠しているようでも、
隠しきることなど到底出来るわけもない、
涙が出るほどの、痛みを伴う切なさと悲しみ、
そして、埋めようのない孤独と心の悲鳴。


手が届くのなら抱きしめたい。
声が届くのなら伝えたい。
想いが届くのなら優しくなりたい。


赦されるのなら傍にいたい。
認められるのならば謝りたい。
愛されるのなら愛したい。


止め処なく溢れる切なさを、
痛みさえ伴うほどの切なさと、
切実な心の声を、
言葉の端々に、語間に、
そして、言葉の裏側に、
惜しみなく響かせた1冊。


他作品『君にしか聞こえない』にも収録されていて、
”べた”な話かもしれないけれど、
「Calling You」は是非、読んで欲しいと思う。


どんなにイマが辛くても、
ミライを生きる自分自身が、
力の限り、精いっぱいに、
涙に暮れるイマの自分を、
励ましてくれるから。


あなたは決して孤独ではないよ、と。




 

もうすぐ来るね。



昨日も今日も札幌は、
日中でも15度にもならず、
部屋の中まで、
冷え冷えとしてて寒過ぎ。


ストーブのスイッチを入れるか入れないか、
朝からずっと悩んでいるけれど、
今からストーブつけてたのでは、
先が思いやられるから、
伸ばした右手を、左手で押しとどめる。


もうすぐとは言わず、
あっという間に冬が来る。


雪かきのことを考えると、
今年もか、と嫌になるけれど、
また星の綺麗な季節が来るのかと思うと、
いい歳こいて、ワクワクする。


冬の凛として痛いほどの空気は、
背筋までしゃんとするような、
そんな気がして、嫌いじゃない。


また冬が来る。


今年こそは夜空を見上げて歩いて、
すっ転んで痛い目見ないように気を付けて、
大好きな星空に手を伸ばそう。


それにしても寒いw




ボクら星屑のダンス



佐倉 淳一 『ボクら星屑のダンス』(角川書店)


++++++


借金で浜名湖に入水しようといていた浅井久平は、
同じく自殺を図る不思議な子どもヒカリと出会った。
ヒカリは最先端科学センターから逃げ出してきた天才だという。
半信半疑ながらも一緒に逃避行を始めた久平。
一方、内閣官房から指令を受けた警察はヒカリの捜索を開始。
だが、ヒカリはネットを駆使して逆にみずから誘拐を装い、100億円を要求した。
果たしてヒカリたちは現金を奪取し、偽装誘拐を完遂できるのか?


++++++


天才には天才の悩みがあり、
一般人には一般人の悩みがあり、
誰もが自分の持てる世界の、
めいっぱいのラインで、
悩んだり、苦しんだり、もがいたり、
ぐだぐだしたり、歪んだり、焦ったり。


でもそうやって、みんながみんな、
ダンスを踊っていると思えたら、
世界は一転、きらきら輝くのかもしれない。


嫌いは、好きに。
キレイは、汚いに。
悩みは、楽しさに。
泣き顔は、笑顔に。
愛は、憎しみに。


世界はぜんぶ、紙一重だから。


眉間にシワが寄り切ったようなヒカリが、
穏やかで優しい微笑みを浮かべられるようになっていく過程は、
人生そのものを諦めかけたどこにでもいるような久平が、
守るべきもの、大切なものに愛しさを抱けるようになっていく過程は、
読んでいてとても微笑ましく、キラキラと輝いてる。


若干の説明不足は感じるものの、
テンポよく物語は進み、
ぐいぐいとこの世界に惹きつけられる。


個人的には久平とヒカリが踊るシーンが好きで、
読みながらその姿が頭に浮かんで、
なんとも言えず感動的というか、
幻想的というかで、ジーンときてしまった。


久しぶりに楽しく読めた1冊です。




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